「0」は何桁の整数か?

先日、教室に通っているある年少さんのお母様からご質問がありましたので、お答えしておきます。

(質問)
1桁の数は0から9までの10個ですか、それとも1から9までの9個ですか。

(回答)
1, 2, 3などの数は自然数とか、正の整数といいます。
さて、ご質問は自然数の桁数についての質問でした。

1桁の整数は1から9までの9個となります。同様に、2桁の整数は10から99までの90個になります。3桁の整数は100から999までの900個になります。
2桁、3桁の整数については異論はないと思います。最小の2桁の数は10、最大の2桁の数は99ですからね。

では、1桁の正の整数についてはどうか。

0は「正の」整数ではないので、除外されるというのは、あまり納得できる答えではありません。数の範囲を広げて、0も考えることにすれば、0は何桁の整数なのかという疑問に答えていないからです。

正解は、「0には桁数がない」というものです。

そんな馬鹿なと思うかもしれません。

桁数というのはふつうは、その数を紙の上に書いてみたときの文字数ですよね。紙面を占める幅といってもよいでしょう。紙の上に「0」と書いてみれば、確かに紙面を占拠していますし、鉛筆の芯も減っています。なので、「0」にも桁数があると思いたい気持ちはよくわかります。しかし。。。
数学は何かを決めておしまいではありません。この場合は「桁数」ということばの意味を国語辞書的な意味で決めただけではおしまいにならないのです。
数学では何か約束事を決めたら、それを使って何かをしなければなりません。その「何か」とは多くの場合、計算です。

では、その「何か」を実際にやってみましょう。たとえば、こんなふうに話が続きます。

「10×10」はいくらですか。答え:100です。
「99×99」はいくらですか。答え:9801です。
そうです。2桁の数と2桁の数を掛けると、3桁から4桁までの数になるのです。

同じように、2桁の数と3桁の数を掛けると2+3=5桁の数になるか、それより1桁だけ少ない桁数の数になることがわかります。

このように、数と数を掛けるとき、結果の桁数は「だいたい掛けた数のそれぞれの桁数の和になる」という性質がありますが、数に0を掛けた場合だけは、そのような性質が破綻します。どんな数に0を掛けても結果は0になってしまいますからね。

そういうわけで、「0」の桁数について考えるのは自由ですが、それをどのように決めてもうまくいかないことがわかると思います。
「0」はいろいろな意味で例外的な数で、数の仲間に入れてもらえないこともあるくらい変則的な性質をいくつももっている数です。

「0」の桁数は考えることができない、が正解でした。